なぜ起こる?「気象病」の正体とアロマケア

悪天候の日に体調を崩しやすい、身体の痛みが強くなる気がする……。そんな経験はありませんか?近年、天気と体調の関係が医学的にも注目され、「気象病」として認知されるようになってきました。本記事ではその正体とメカニズムをひもとき、香りを活用したセルフケアのヒントを探ります。

監修
久手堅 司
監修
久手堅 司

くでけん・つかさ/せたがや内科・神経内科クリニック院長。内科・神経内科・頭痛・脳卒中専門医。臨床経験を基に「気象病・天気病外来」などの特殊外来を立ち上げる。著書に『気象病ハンドブック』(誠文堂新光社)がある。

気象病が起きるメカニズム

気象変化が身体にとってストレスに

私たちの身体にはホメオスタシス(恒常性)が備わっていますが、外部環境の変化が激しく頻繁に起こると、その調整機能が追いつかなくなります。天気・気温・湿度・気圧の変動は身体にとって大きなストレスとなり、特に冬から春にかけての寒暖差、梅雨、酷暑、台風、ゲリラ豪雨が続く時季は天候が不安定で、身体は休まる間がありません。その結果、自律神経が酷使され、調整機能が低下し、さまざまな不調を引き起こします。

耳が敏感だと、気圧の変化に反応

気象病の鍵を握るのが「気圧の変化」です。気圧は耳の奥にある「内耳」で感知され、前庭神経を通じて脳の視床下部へ伝わり、自律神経へと指令が送られます。気圧が急激に低下すると体内の圧力バランスが崩れ、内耳が膨張。その影響で自律神経が乱れ、頭痛やめまいが引き起こされます。内耳の感覚には個人差があり、敏感な人ほど自律神経が乱れやすいと考えられています。また、乗り物酔いしやすい人は内耳が敏感な傾向があり、気圧の変化にも影響を受けやすいといわれています。

骨格がゆがんでいると、さらに気圧の影響を受けやすい

左)脊柱が3つのカーブを描く理想の姿勢、右)脊柱のカーブが少なくゆがんだ姿勢

気圧の影響は骨格とも関係していることが明らかになってきました。私たちは普段「1気圧」の環境で生活していますが、骨格が整っていれば気圧の変化の影響を受けにくく、ゆがみやズレがあると影響を受けやすくなります。特に重要なのが脊柱の状態です。猫背や反り腰、ストレートネックは、脊柱のカーブが適切でなく、ゆがんだ状態といえます。脊柱のゆがみは肩こり、首こり、頭痛、めまい、自律神経の不調とも関係があり、ゆがみが強いほど気象病の症状も強くなりやすいのです。

気象病に負けない身体を作る、セルフケア

耳のマッサージ

気圧の変化を感知する内耳は、マッサージで循環を促すことでむくみを防ぎ片頭痛やめまいを軽減できます。気づいたときに、こまめに行うのがおすすめです。

〈手順〉

  1. 右手で右耳を、左手で左耳を持ち、耳たぶの少し上を水平方向に引っ張り、510秒キープして離す。数回繰り返すとよい。
  2. 耳を上下に数回引っ張る。
  3. 耳を回す。前回りと後ろ回りで5回ずつ。

耳まわりの指圧

気圧の影響で頭痛やめまいが起こるときは、こめかみや噛み合わせなど、耳の周囲が緊張しています。この部分を指圧でゆるめ、緊張を解くことで、痛みや不快感が和らぎます

〈手順〉

  1. 人さし指と中指でこめかみをぐっと押し、2030秒キープする。
  2. 頬骨の下の噛み合わせの部分を、同じように指圧して2030秒キープする。
  3. 耳たぶの後ろの骨の凹み(顎関節)を、斜め上に持ち上げるようにぐっと押し、2030秒キープする。

首ストレッチ

長時間のスマートフォン使用やパソコン作業によって、首の骨[頸椎(けいつい)]がストレートネックになりやすくなります。このストレッチで、頚椎本来のゆるやかなカーブを取り戻し、首こりや肩こりの予防と緩和につなげましょう。

〈手順〉

  1. 細く折りたたんだタオルの両端を持ち、後頭部と首の境目に引っかける。斜め上を向きながら、タオルも斜め上に引っ張る。タオルと首で押し合うように力を込め、30秒キープする。
  2. 首を斜め下に向け、タオルも斜め下に引っ張りながら30秒キープする。首がタオルの押す力に負けないように意識するのがポイント。

違和感や痛みを感じたら、すぐに中止しましょう。

猫背のリセット

ストレートネックと同様に、長時間のスマートフォン使用やパソコン作業によって猫背になりやすくなります。このストレッチで姿勢を整え、肩こりや背中のこわばりを和らげましょう。左右の肩甲骨を真ん中に寄せることで、胸が開き、姿勢が整います。デスクワークの合間に、気分転換を兼ねて1時間ごとに行うとよいでしょう。

〈手順〉

  1. 両手を後ろ手に組む。息を吐きながら、左右の肩甲骨を寄せるようにして胸をゆっくりと開いていく。
  2. 胸がしっかり開いたところで2030秒キープ。3セット行うと効果的。

心身のコンディションを整えるアロマ&ハーブ活用術

日中のリフレッシュに役立つアロマ

長時間のデスクワークやマルチタスクの多い現代のライフスタイルは、心身が過緊張に偏りがち。ストレッチや腹式呼吸とともに、リフレッシュとリラックスを併せ持つ香りを味方につけて。

<日中のおすすめアロマレシピ>

  • グレープフルーツ…2
  • ベルガモット…2
  • ユズ…2
  • ホーリーフ…1

就寝前に心身をリラックスへ導くアロマ

日中に緊張状態が続くと、身体が就寝モードにスムーズに切り替わらず、眠りを妨げることも。そんなときは、ストレッチや深呼吸とあわせて、心身を深くリラックスさせる香りを取り入れましょう。穏やかな香りのブレンドが、自然に眠りへと導いてくれます。

〈就寝前のおすすめアロマレシピ〉

  • ラベンダー…3
  • ネロリ…2
  • ローマンカモミール…1
  • サンダルウッド…1

首こり・肩こりに優しく働きかける、ハーブティー

長時間同じ姿勢やゆがんだ姿勢を取り続けると、筋肉がこわばって血流が滞り、痛みにつながります。こまめなストレッチとともに、ホーソン、ギンコのハーブティーで凝りを和らげましょう。

 

〈論文紹介〉カモミール茶摂取による自律神経機能と感情指標の変化−青年男性における検討−

〈実験方法〉健常な青年男性12名に、ストレステストを45分負荷した後、カモミール茶または同温・同量の白湯を飲ませ、自律神経機能(心拍数・心電図R-R間隔・末梢皮膚温)と感情指標(質問紙MCLによって測定した快感情、リラックス感、不安感)の変化を同時に測定した。

〈結果〉カモミール茶を飲んだ後は、白湯に比べて心拍数と交感神経活動の低下が大きく、末梢皮膚温の上昇も大きかった。また、リラックス感が上昇した。このことから、カモミール茶により副交感神経優位の状態が引き起こされたと推測される。

〈出典〉 森谷 絜,他 (2001) カモミール茶摂取による自律神経機能と感情指標の変化−青年男性における検討−. バイオフィールドバック研究 28:61-70.

 

※この記事は取材当時の情報です 。

※本サイトの記事・写真・イラストなどの無断転載・複製はご遠慮ください。

About

「sense of AROMA」は、公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ)が運営するWEBメディアです。
アロマで暮らしを彩り、健康で豊かな毎日を過ごすためのヒントをお届けします。

Page
Top