アロマの力を味方に。「更年期」の不調との向き合い方

更年期は、40代後半から50代前半に迎える人生100年時代の折り返し地点。特に女性は、ホルモンバランスの変化により、男性よりも体調の波が大きくなりがちです。そんな更年期の不調を和らげるための、アロマの活用方法を紹介します。周囲の理解とサポートが、不調を乗り越える大きな助けになることも覚えておきましょう。

監修
対馬ルリ子
監修
対馬ルリ子

つしま・るりこ/博士(医学)、産婦人科医師、AEAJ顧問、「ウィミンズ・ウェルネス女性ライフクリニック銀座・新宿 理事長」。専門は周産期学、ウィメンズヘルス。著書『プレ更年期1年生』『更年期、私のトリセツ』(ともにつちや書店)など多数。

監修
吉川千明
監修
吉川千明

よしかわ・ちあき/美容家、メノポーズカウンセラー、AEAJ認定アロマテラピーインストラクター。対馬ルリ子医師と20年前より「女性ホルモン塾」を開催。対馬医師との共著『閉経のホントがわかる本』(集英社)、『オトナのための女性ホルモンの話』(宝島社)など著書多数。

精油を使ったセルフケアで、「更年期」の症状を和らげる

更年期にあらわれる症状は人により千差万別。そのため、自分にあったセルフケアを知っておくと心強いものです。なかでもアロマテラピーは、日常生活に手軽に取り入れられ、女性ホルモンの減少に伴う不調や症状を和らげる効果が期待できます。更年期は自律神経のバランスが崩れ、副交感神経の働きが低下しやすいため、深くリラックスできる精油を選ぶとよいでしょう。たとえば、イランイランクラリセージなどの陶酔感のある香りの芳香浴がおすすめです。

更年期を香りでケアするための、知っておきたい4つのポイント

イライラ・気分のムラには、フローラルな香りがおすすめ

不安や落ち込みを感じたときは、高揚感のあるローズネロリメリッサの精油を。ハンカチにつけて嗅いだり、トリートメントオイルやバームを作り、手もとや胸もとにすり込むのもおすすめ。イライラには、気持ちのバランスをとるゼラニウムイランイランクラリセージの精油を植物油で希釈し、ロールオンにして持ち歩くのもよいでしょう。

痛み・こわばりには、ラベンダーでセルフトリートメントを

女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が低下すると、指や手首、膝などの関節が痛くなったり、こわばったりすることがあります。そんなときは、ラベンダーの精油を使ったセルフトリートメントを取り入れましょう。ベースにはアルニカ油がおすすめです。気になる箇所はストレッチを習慣にして、寝る前などに気持ちよく伸ばすようにしましょう。

ほてり・のぼせには、精油ですっきりと

のぼせやほてり、多汗は自律神経の乱れによる血液循環の不調が原因です。サイプレススイートマージョラム精油をハンカチにつけて嗅いだり、ペパーミントを含む化粧水をコットンに含ませて、首周りを拭くのもすっきりとして効果的です。サイプレス精油に含まれるセドロールという成分には、副交感神経を優位にする作用が確認された論文があります。

不眠・浅い眠りには、ハーブティーでリラックスタイム

自律神経のバランスが崩れると睡眠の質が低下しがちです。寝る前には、ラベンダースイートマージョラムなど、リラックスに導く精油や、スイートオレンジベルガモットなど気持ちを和らげる精油を枕元に漂わせるのもおすすめ。ハーブティーを飲むなら、ジャーマンカモミールバレリアンを。

〈出典〉

 四十竹美千代, 他(2012

天然匂い物質セドロールの生理学的応用とアロマセラピーへの応用,The Journal of Nursing Investigation 10(12)56-63

寄り添い方を知って、「更年期」の方をサポート

家族や同僚、友人など、身近な人が更年期で辛そうにしているとき、私たちはどのように寄り添えばよいのでしょうか。本人が十分な知識を持っておらず、不調が更年期によるものと気づいていない場合もあります。また、更年期であることを受け入れられず、不調を隠しているケースも少なくありません。人それぞれ状況は異なりますが、周囲がともに歩むためのサポートは大切です。更年期を正しく理解することはもちろん、どんな声のかけ方や配慮が必要なのか、「みんなで一緒に乗り越える」という視点で接し方を考えてみましょう。

更年期の方を支えるための、大切にしたい4つの寄り添い方

ゆっくりで大丈夫、の一言を

更年期の症状には、集中力が落ちたり、仕事や家事の段取りが悪くなることがあります。本人は「こんなはずでは……」と焦ることも多く、特に真面目な人ほど自分を責めがち。そんなときは、周囲がせかさず、安心感を与えることが大切です。家族であればおおらかに見守り、仕事などの場面なら、「ゆっくりでも大丈夫ですよ」と声をかけて、焦らずに行えるよう雰囲気や環境を整えましょう。

負担を減らす手助けで、本人の気持ちを楽に

症状の程度は人それぞれですが、今までと同じペースでタスクをこなすのは、難しくなることを理解しましょう。本人がルーティンとして当たり前のようにやっていることのなかに、手を抜けるポイントがあるかもしれません。「お弁当は毎日手作りしなくても大丈夫」などと家族から申し出があると、本人の気持ちが楽になることも。なかには過剰に心配されることを負担に感じる人もいるので、さりげなく手を差しのべてみましょう

ときには専門家に頼ることもすすめてみる

更年期に差しかかり、突然の変化を感じた本人自身がいちばん戸惑っているのではないでしょうか。職場や家庭で、あまりにもつらそうな様子が続く場合は、婦人科の受診を促してみましょう。専門家からの適切なアドバイスであれば、本人もすんなりと受け入れやすく、症状の緩和につながる可能性があります。身体の状態を客観的に把握し、適切な緩和策を見つけることが必要です。

正しい知識を持って、思いやりのある配慮を

近年では減少傾向にありますが、更年期についてからかいを含んだ軽々しい発言がされることもあります。更年期について話すときは、場所やタイミングに配慮し、本人の気持ちや状態への心配りが望まれます。そして、男女を問わず誰もが正しい知識を身につけることが基本です。不調や症状は、本人の意思でコントロールできるものではありません。周囲は思いやりを持って接しましょう。

〈論文紹介〉ネロリ精油の吸入によって、更年期症状が緩和される可能性

〈実験方法〉健康な閉経後の63名の女性を対象に、ネロリ精油をアーモンド油に0.1%もしくは0.5%の濃度で希釈したものを吸入する群、アーモンド油のみを吸入する群に分け、1日2回の吸入を5日間にわたって行った。実験を行う前と行った後の心身の変化を、閉経期の生活の質の指標(MENQOL)など複数の指標を用いて計測した。

〈結果〉MENQOL指標において、ネロリ精油を用いた2つのグループで有意に更年期症状が改善したことが確認された。また、血圧においても有意な低下が見られた。

〈出典〉Seo Y C, et al. (2014) Effects of Inhalation of Essential Oil of Citrus aurantium L. var. amara on Menopausal Symptoms, Stress, and Estrogen in Postmenopausal Women: A Randomized Controlled Trial. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine. 2014: 796518.

※この記事は取材当時の情報です 。

※本サイトの記事・写真・イラストなどの無断転載・複製はご遠慮ください。

About

「sense of AROMA」は、公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ)が運営するWEBメディアです。
アロマで暮らしを彩り、健康で豊かな毎日を過ごすためのヒントをお届けします。

Page
Top