古代ミイラがまとった香りが最新研究から判明
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※画像はイメージ
古代エジプトの人々が死者の魂を清浄に保つため、遺体に防腐処理を施してつくったのがミイラ。そんなミイラには約5,000年の時を経たいまも独特の芳香があることが、英国とスロベニアの研究チームによる最新の研究で明らかになりました。
研究チームは、カイロのエジプト考古学博物館に収蔵されている9体のミイラを対象に、化学分析と官能評価を組み合わせた調査を実施。その結果、どのミイラにも共通してウッディーで甘く、スパイシーな香りが感じられました。
この結果をもとに、研究者たちはミイラが発するにおいの要因を4種類のカテゴリーに分類。松やシダーなどの木の樹脂に由来するα-ピネンやリモネン、植物由来の防腐成分として知られるバニリン、有機物の分解過程で生じる乳酸やフルフラールが検出されました。
心地よい香りは神々の清浄さの象徴とされ、一方で悪臭は死体の腐敗や堕落を示すものと考えられていた古代エジプト。遺体の神聖性を保つために松ヤニやシダーウッド精油、ミルラ(没薬)、フランキンセンス(乳香)といったウッディーで甘い香りが特徴の材料が防腐処理に用いられていたのです。
香りの知恵が古代から人々の生活に根づいていた実感を得られる研究結果ではないでしょうか。
〈参考文献〉
Paolin E, et al. (2025) Ancient Egyptian Mummified Bodies: Cross-Disciplinary Analysis of Their Smell. Journal of the American Chemical Society 147(8):6633-6643.