精油を1%以下に希釈する理由とは?
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なぜAEAJでは精油の使用濃度を1%以下にすることを推奨しているのでしょうか?アロマテラピーを安全に楽しむために、精油濃度に関する研究や論文をひも解きながら、わかりやすく解説します。
精油濃度1%以下が推奨される理由

精油は植物から抽出されたさまざまな化学成分で構成されています。その芳香性のみならず、免疫賦活作用や抗菌作用など、私たちに多くの恩恵を与えてくれる一方で、使い方によっては皮膚刺激や毒性作用を引き起こすこともあります。AEAJでは、「誰もが」安全にアロマテラピーを楽しめるよう、臨床および研究データをもとに、精油濃度を1%以下にすることを推奨しています。具体的には、肌に精油を使用する際の濃度として、ボディ用では1%以下、フェイス用では0.1〜0.5%以下になるように、希釈濃度の目安を定めています。
1%以下を推奨するのはなぜでしょうか?たとえば湿疹を発症したアロマセラピストに対し、さまざまな精油でパッチテストを行った研究では、ゼラニウム精油やレモン精油などが5%濃度で強い陽性反応を示した一方、1%濃度では陰性であった ※1という報告があります。また、精油は使用量が多ければ高い効果を得られるというわけではありません。1%濃度のラベンダー精油の方が、10%濃度よりも集中力が高まる傾向が見られた ※2という研究データが報告されています。これは、適切な濃度で使用することで、より高い効果を得られる可能性があることを示し、精油1%推奨の理由のひとつに挙げられます。
〈出典〉※1 Selvaag, et al. (1995)Allergic contact dermatitis in an aroma therapist with multiple sensitizations to essential oils.Contact Dermatitis 33(5):354-355.
※2 小長井ちづる, 古賀良彦( 2008)ラベンダー精油が脳機能に与える影響の濃度による差異の検討. アロマテラピー学雑誌 8(1):9-14.
論文からわかる、高濃度精油のトラブル症例2つ
精油を1%よりも高い濃度で使用することにより起こった症例を、2つの論文から紹介します。論文からは「この濃度であれば安全」とは一概に言えないことがわかります。
〈症例1〉ラベンダー精油の原液使用による、アレルギー性接触皮膚炎の発症

41歳女性が、枕にラベンダー精油を数滴垂らして寝る習慣を続けた結果、頸部の紅斑および顔面の腫れが現れました。パッチテストの結果、ラベンダー精油の1%と2%では陰性、5%と10%では陽性反応を示しました。一方で、ラベンダー精油の主成分であるリナロールおよび酢酸リナリルを用いたパッチテストと光パッチテストはすべて陰性でした。
〈出典〉飯島茂子,他 (2018) ラベンダーオイルの原液を枕に数滴垂らして寝る習慣から生じた頸部のアレルギー性接触皮膚炎. 日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 1(3):219-225.
〈症例2〉皮膚炎患者に現れた、12種の高濃度精油への接触陽性反応

10,930人の皮膚炎患者を対象に12種類の精油(2~10%濃度)でパッチテストを行った結果、908人(8.3%)が1種類以上の精油に陽性反応を示しました。被験者の1%以上が陽性反応を示した精油は、イランイラン精油10%濃度、レモングラス精油2%濃度、ジャスミン(アブソリュート)精油5%濃度、サンダルウッド精油10%濃度、クローブ精油2%濃度、ネロリ精油5%濃度の6種類でした。
〈出典〉Johannes Geier,et al. (2022) Contact sensitization to essential oils:IVDK data of the years 2010-2019.Contact Dermatitis 87(1):71-80.
〈論文紹介〉精油10種の濃度別皮膚刺激性の研究


アロマテラピートリートメントでよく使用される精油10種を、グレープシード油で1%、3%、5%に希釈し、20名(男性7名、女性13名)の被験者の上腕内側部に塗布し、ガーゼで覆いました。24時間経過後、ガーゼをはがして肉眼で判定。皮膚表面のレプリカ(皮膚表面の凹凸)を採取、顕微鏡で判定し、皮膚刺激性を評価しました。その結果、すべての精油において1%の希釈濃度では準陰性※であり、1%希釈濃度が、安全性の観点から妥当であることが示唆されました。
※陰性<準陰性<準陽性<陽性の順で判定しています。
〈出典〉野田信三, 他 (2015)精油10種の皮膚刺激と濃度に関する研究. アロマテラピー学雑誌.15(1):115-121.
化粧品などに含まれる香料成分にも、安全規制はある?

化粧品や日用品などに使用される香料は、その安全性の確保のために、IFRA(国際香粧品香料協会)やRIFM(香粧品香料原料安全性研究所)といった国際的な組織による自主規制が行われています。IFRAでは主に人や環境に対する安全性について規制が設けられ、カテゴリーごとに分類された製品中に使用できる、香料成分の最大許容濃度を設定しています。
例えば、ローズ精油などに含まれる香気成分のひとつゲラニオールは、香水など香料関連製品の最大許容濃度は4.7%、フェイスクリームなど、顔に塗るフェイシャル保湿製品で主に洗い流さない製品では0.78%と定められています。
まとめ
精油濃度1%以下というのは、誰もが安全にアロマテラピーを楽しむための基本的なガイドラインです。大切なのは、精油や植物油の最新の知識、そして精油を使用する際の健康状態や体質などを考慮すること。そのためには、常に最新の情報をキャッチし、学び続けることが重要となります。
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