万能ともいわれるアロマ「ラベンダー」の効果とは?その実力と使い方を専門家が解説
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さわやかでやさしい香りのラベンダーは、精油(エッセンシャルオイル)の代表格ともいわれ、多様な使い道から「万能のアロマ」と称されることも。
今回は、ラベンダー精油の特徴や作用、毎日の生活で役立つ使い方を解説します。初心者の方でも簡単に取り入れられる方法をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ラベンダーとは

ラベンダーはシソ科に属するハーブで、特にフランスやブルガリアといった地域で広く栽培されています。学名は「Lavandula angustifolia(Lavandula officinalis)」で、「Lavandula」はラテン語で「lavo(洗う)」や「lividus(青みがかった鉛色)」に由来するといわれています。
品種改良が盛んに行われており、イングリッシュ系(真正ラベンダーやラバンジンなど)とフレンチ系(ストエカスなど)などの品種群に分けられます。
ラベンダーの精油の特徴
ラベンダーの精油は、真正ラベンダー(トゥルーラベンダー)の花などから水蒸気蒸留法で抽出され、やや甘みを含んだ草原のような香りが特徴です。
水蒸気蒸留法とは、植物を水蒸気で蒸らして香り成分を含む蒸気を集め、それを冷却して精油と水とを分離する方法です。精油と同時に得られる水には水溶性の香り成分が溶け込んでおり、芳香蒸留水(フラワーウォーター、ハーブウォーター)としてスキンケアなどに使われます。
ラベンダーの精油の効果

ラベンダーのアロマといえば、リラックスをイメージする方も多いのでは?実は、リラックス以外にもたくさんの力を持っているんです。ここでは、万能ともいわれるラベンダー精油の力をお悩み別に解説していきます。
ぐっすり眠りたいときに
人間の体内時計は、約1日のリズムで調整されており、これを「サーカディアンリズム(概日リズム)」と呼びます。
体内時計の周期は約24~25時間と地球の1日(24時間)より少し長いため、外界のリズムと一致するように毎日微調整されています。しかし、この調整が乱れると、寝つきが悪くなったり、睡眠の質が低下したりすることが起こるのです。
ラベンダー精油は、研究で睡眠の質の向上や疲労の緩和が報告されており、眠れないときの味方になってくれる香りです。
空気の洗浄や感染症予防に
優れた抗菌・抗真菌作用でも知られるラベンダー精油。カビや黄色ブドウ球菌のほか、水虫の原因菌などを抑える働きが報告されています。
日々のお掃除はもちろん、お部屋の空気をクリーンにしたいときにもおすすめです。
免疫力を高めたいときに
大事な予定を控えているので絶対に風邪をひきたくない!花粉症などのアレルギーが気になる……。そんなときにも、ラベンダー精油が助けになります。
免疫力は、ストレスとも密接な関係があるため、ストレス緩和や抗菌をサポートするラベンダー精油を香らせれば、まさに一石二鳥です。
研究では、ラベンダー精油を使用したアロマテラピートリートメントによって免疫力の指標が高まったという結果も報告されています。
ストレスを和らげたいときに
過剰なストレスは自律神経やホルモンのバランス、免疫機能が乱れる原因となり、不眠やPMS(月経前症候群)、肌荒れなど、さまざまな不調につながります。
ラベンダー精油の香りは、自律神経に働きかけて心身の緊張を和らげたいとき、ストレスによって起こる肌荒れをケアしたいときなどに使われてきました。副交感神経を優位にしてリラックスを促す作用も多く報告されており、ストレスケアに用いる代表的なアロマといえます。
AEAJが実施した調査では、ラベンダーの香りがイライラや疲労感、不眠の軽減に役立つと実感したという回答が多く得られました。多くのアロマユーザーが自律神経の揺らぎによる不調を感じたときにラベンダー精油の力を借りているようです。
PMS・更年期の不調に
月経前のイライラや気分の落ち込み、関節や腰の痛みなど、多くの女性が悩んでいるPMS(月経前症候群)は、女性ホルモンの変動に加え、ストレスや生活習慣なども原因といわれています。
一方、加齢とともに女性ホルモンの分泌量が減少することで起こる更年期には、不眠、イライラ、集中力の低下、めまいなど、さまざまな身体的・精神的な不調が起こります。
ラベンダーの精油は、気分の落ち込みを和らげたいとき、イライラした気持ちを鎮めたいときにも役立ちます。ラベンダー精油を吸入することで、不安、うつ状態、神経過敏、痛み、膨満感、抑うつ的思考などのPMS症状が軽減したという研究報告もあります。
また、アロマ愛好家が更年期のケアに活用した精油の第1位に選ばれたことも。女性ホルモンの乱れが気になるときに取り入れてみては?
ラベンダーの精油の活用法

さまざまなお悩みに役立つラベンダー精油を最大限活用するために、簡単に取り入れられる方法をご紹介します。
芳香浴法

芳香浴法とは、精油を空気中に拡散して香りを楽しむこと。ティッシュやハンカチ、コットンに精油を1~2滴含ませてオフィスのデスクや枕元に置くだけで、気軽に行えます。
ハンカチを使う場合はシミになることがあるため、目立たない部分に少量を試してから使用しましょう。また、精油の原液は刺激が強いため、皮膚につくと肌トラブルを引き起こす可能性があります。精油がついたハンカチで肌や目を触ることのないよう、十分注意しましょう。
アロマスプレー

アロマスプレーは芳香浴法のひとつ。無水エタノールに精油を溶かし、水を加えるだけで手軽に作れるアイテムです。気分転換にシュッとひと吹きすれば、心地よい香りが広がります。お部屋のにおいが気になるときや、お掃除にも使えます。
〈準備するもの〉(50ml容器の場合)
- 精油…合計3~20滴程度
- 無水エタノール…5ml
- 水…45ml
- あると便利な用具…耐熱ガラスビーカー、耐熱ガラス棒、ラベル
- 遮光性のスプレーボトル(プラスチックは溶ける場合があるため、ガラス製かアルコールに対応した素材のもの)
〈作り方〉
- ビーカーなどに無水エタノールを入れ、精油を加える
- ガラス棒などでよく混ぜ合わせる
- 水を加え、再びよく混ぜ合わせたら容器に移し、作製日を記入したラベルを貼る
※使用時は容器をよく振ってから使いましょう。
※保存料が入っていないため、冷暗所に保管し2週間以内に使い切ってください。
蒸気吸入法

蒸気吸入法とは、マグカップや洗面器などに半分ほどお湯を入れて精油を1~3滴落とし、蒸気とともに立ち上る香りを楽しむ方法です。深呼吸をするように、鼻や口からゆっくり吸い込みましょう。
※咳やぜんそくの症状がある場合は、蒸気が刺激となる可能性があるため控えてください。また、やけどや長時間の使用にも注意が必要です。
※精油は飲むことができません。マグカップを使用する場合は、誤って飲まないよう注意しましょう。
沐浴(全身浴・手浴・足浴)法

沐浴法とは、精油の香りとともに全身浴や部分浴を行うこと。精油を5ml程度の無水エタノールで希釈してから浴槽のお湯に加え、よくかき混ぜるだけで、リラックスしたバスタイムを楽しめます。
また、洗面器を使った手浴や足浴も気軽にできる方法のひとつ。特に足浴は、テレビを見たり読書をしたりしながら冷え対策ができるので、シャワー派の方にもおすすめです。
入浴時は特に肌が敏感になりがち。精油は、適切な量を守って使うことが大切です。使用量は下記を目安にしましょう。
- 全身浴…1~5滴
- 半身浴・手浴・足浴…1~3滴
※無水エタノールは薬局などで購入できます。
※肌に刺激を感じた場合は、すぐに大量の水で洗い流し、使用を中止してください。
トリートメント法

トリートメント法は、ホホバ油などの植物油に精油を混ぜ、肌をやさしく塗布する方法です。トリートメントオイルは混ぜるだけで簡単に作れるうえ、ヘアオイルやネイルオイルにも使えて便利です。
作り方は下記の通りです。
〈準備するもの〉(30ml容器の場合)
- 精油…ボディ用合計1~6滴/フェイス用合計1~3滴
- 植物油(ホホバ油、スイートアーモンド油など)…30ml
- あると便利な用具…耐熱ガラスビーカー、耐熱ガラス棒、遮光性保管容器、ラベル
〈作り方〉
- ビーカーなどに植物油を入れ、精油を加える
- ガラス棒などでよく混ぜ合わせた後、遮光性保管容器に移す
- 作製日や内容などを記入したラベルを貼って保管する
※保存料が入っていないため、冷暗所に保管し1カ月以内に使い切りましょう。
※肌に刺激を感じた場合は、すぐに大量の水で洗い流し、使用を中止してください。
ネイルオイルやアロマフレグランスなど、アロマクラフトの作り方を動画でご紹介しています。
公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ)のYouTubeチャンネルはこちら
まとめ
やさしい香りで人気のラベンダー精油。さまざまな作用があり、アロマスプレーや、トリートメントオイルなど幅広く活用できます。暮らしに取り入れれば、心も身体も健やかになれそうです。
香りの力に興味がある方は、「アロマテラピー検定」で精油の魅力を学んでみませんか?体調や目的に合わせて精油を選べるようになり、アロマの楽しみ方がさらに広がります。
出典:Mehtap Kavurmacı, et al(2022), Determination the effects of lavender oil quality of sleep and fatigue of students.Perspect Psychiatr Care 58(3):1013-1020.
Li-Wei Ko,et al(2021)A pilot study on essential oil aroma stimulation for enhancing slow-wave EEG in sleeping brain.Sci Rep 13;11(1):1078.
20種の精油の微生物に対する制菌効果.川上裕司、橋本一浩、福田安住、菅沼 薫、新井 亮、熊谷千津、ケイ武居、野田信三、野松慶子、野村美佐子、福島明子、藤田晶子、松田都子、和智進一、山本芳邦.アロマテラピー学雑誌、Vol.12, No.1, 66-78, 2012
伊藤あづさ (2002) 『香り』を媒介としたケアによるストレス軽減と免疫賦活効果の検討. 日本味と匂学会誌 Vol.9(3):.619-622.
AEAJ「精油の効果実感に関する調査」(2024年4月~5月、回答者数916人)
Tuğba Uzunçakmak, et al.(2018) Effect of aromatherapy on coping with premenstrual syndrome: A randomized controlled trial. Complementary Therapies in Medicine 36:63-67.
AEAJ「更年期に役立つアロマに関する調査」(2023年6月、回答者数539人)
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